名前に使ってはいけない漢字などない!~文字の意味や字源が運勢に影響しない理由
姓名判断では古来より、「忌字」と称する数多くの漢字が知らされてきました。現在でも「姓名判断 使ってはいけない漢字」などと検索すると沢山出てきます。その中には、たとえば「秀」「真」「光」など名前によく使われる漢字の他、「福」「嘉」「富」など一般的に縁起が良いとされる文字もあり、誰もが困惑してしまいます。
また当サイトの命名サービスをご依頼される方のなかにも、「『幸』の字はダメだと聞いたことがあるのですが、使っても良いのでしょうか?運が悪くなったりはしないでしょうか?」といったようなご質問をいただくことが度々あります。
しかし実は、文字の意味や字源に運勢を左右する力は一切ありません。今回のコラムではその理由を少し詳しく解説していきたいと思います。
漢字のもつ意味や字源が運勢に影響しない理由
なぜ「文字の意味や字源に運勢を左右する力は一切ない!」「名前に使ってはいけない漢字などない!」と堂々と言えるのか。それは、文字に含まれた意味というものは、人間が恣意的に付加したものだからです。たとえばある一つの文字に対して、それを見る人によって様々な解釈ができるのがその証拠です。「柔」という文字をポジティブに解釈する者もいれば、反対にネガティブに解釈する者もいるでしょう。
文字の原初的な意味に関しても同じです。たとえば「優」という字は人がしなかなに動く様を描いた文字であり、しなやかとかすぐれたといった意味があるという解釈がある反面、この字は喪に服して悲しむ人の姿であり、哀しみや憂いをあらわしているといった全然別の解釈があるわけです。たとえ「優」の字が原初的には「哀しみ」や「憂い」の意味をもっていたにせよ、別の人、あるいは現在では「やさしい」とか「すぐれた」といった意味で使われている以上、その意味やイメージを否定することは出来ません。つまり「優」に対するこれらの文字解釈は、どちらもある意味では正しいと言うことが出来るわけです。
また、例えば文字の字源においてネガティブな意味をもつ漢字はどうでしょうか?その代表格として「幸」という漢字があります。白川静氏の解説によると、「幸」の字源は以下のように言われています。
手械(てかせ)の形。「吉にして凶を免るるなり」とし、字をぎゃく(※逆の一部)と夭とに従う会意字とする。夭は夭死、ぎゃくに従うてその逆であるから、夭死を免れる意の会意とするのであるが、このように否定の意を加えた会意という造字法はなく、字は明らかに手械の象。罪人を執えるを執(しつ)、報復刑を加えることを報という。また幸声に従うものに悻・婞の字があるが、何れも幸福の義に遠い字で、悻は「もとる」、婞にも「もとる」意があり、従順でないことをいう。(中略)また幸生・幸き(※字が見つからないため平仮名表記)など、願望の意とするが、それらはもと僥倖の義を含むものであろう。[字統]
つまり、「幸」は元は手枷から逃れた僥倖を意味する文字であり、幸せとはほど遠い意味をもつ漢字である、ということなのです。しかし、それではこの「幸」の文字が名前に入っているから刑罰を受けたり逆境に遭遇する暗示があるのかというと、全くそんなことはないのです。
なぜなら、先ほども言ったように文字の意味というものは人間の感情による恣意的なものであるため、普遍性がなく運勢を左右しようにも出来ないからなのです。また、たとえば「幸」には「僥倖」の意味が少なからず含まれているため、もし文字の字源が運勢を左右するのであれば、「僥倖」の意も少なからずあるということになり、そうならなければおかしいのです。
こうなってくると、漢字に対する意味や人々のイメージというものは様々であるため、それら全てが運勢を左右しなければならないということになるでしょう。「花」という漢字について、ポジティブな人は「綺麗だ、美しい」というイメージをもつ反面、ネガティブな人は「綺麗なのは一時的で、やがて枯れる」などと考えるかもしれません。こうなってくると、もうどんな漢字であれ「忌字」となってしまうのであり、それが「忌字」が昔から沢山出てくる理由なのです。
ですから、文字の意味や字源には運勢を左右する力はないと言えるのです。そして姓名において運勢に強く影響するのは、数理と音韻の二つです。従って「使ってはいけない漢字」を実際に使って不幸になっている人というのは、その漢字自体が悪いわけではなく、姓名全体のバランスの悪さによって不幸になっていると考えることができるのです。
しかし、「忌字派」は実際の姓名を確認しないと納得しないと思いますから、以降、実際に使ってはいけないと言われている漢字を例に取り、具体的に解説していきます。
名前に「愛」と付く娘は不幸!?
これは最もよく見かける例です。おそらく、親は子供に愛情の深い子になって欲しいとか、愛情に恵まれる子になって欲しいという願いを込めてこの漢字を付けるのだと思いますが、この文字が名前にあると「かえって愛情に恵まれない子になる」と言った憶測もあります。たしかに「愛」には「哀」と通じるところがあり、文字の意味としては一種の「哀しみ」を含むところがあるようです。
しかし、名前に「愛」があることで不幸になるということはありません。大体において名前に「愛」という文字があって不幸だという人は、姓名全体のバランスが悪いのです。特に三才の配置が悪い場合が多いでしょう。具体例を挙げて見ていきます。
- 飯島愛
- 36才の若さで早世した元AV女優。三才の配置は火・火・火で早世の暗示が出ている。また総運の36数は英雄的波乱数で人生全体に於いて浮き沈みが絶えない。
- 大塚愛
- シンガーソングライター。主運の26は大波乱の暗示、副運の4数は別れの凶相をもつ。総運の29は家庭に落ち着けぬ暗示の準寡婦運。悪くすれば離婚となる。
- 冨永愛
- ファッションモデル。三才の配置が悪いため健康を害しやすく対人関係に苦労。29は上述の通り準寡婦運。
- 福原愛
- 卓球選手。三才【火・火・火】は成功運が強いが、やや短気急壮のためチャンスを逃しやすい。総合的大吉名であるため一生を通じて福運に恵まれやすいものの、主運に寡婦運をもつため恋愛・結婚運には波乱あり。
「幸」は実は幸せじゃない!?
「幸」は前述のように幸せをあらわす文字ではなく、名付けると不幸になると言われます。たしかに「幸」は罪人を捕らえる手械の形だとされ、幸せの意味はそこから逃れた事による僥倖の意だとする論がありますが、そうだとすれば意味的には不吉極まりない感じがします。しかし「幸」の字を名前に付けたからといって無条件に不幸になるわけはありません。同じように以下に例を示してみていきます。
- 松下幸之助
- 松下電器産業(現パナソニック)の創業者。経営の神様とまで呼ばれる。四格に凶数あるものの、三才の配置が気を通じており発展運が強い。また地・外の19は極めて行動的・活動的。
- 坂崎幸之助
- ミュージシャン。主・副運に凶数あるため相応の災いあるものの、三才が気を通じており対人運は吉。また総運の37数は概して努力家かつ誠実なタイプである。
- 小林幸子
- 演歌歌手。三才の配置が木・土・木と悪いため境遇運に恵まれず、対人関係においても苦労が多い。晩年は病難の暗示あり。
- 桜井幸子
- 元女優・歌手。総運の36数は人生全体に於いて浮き沈みの激しい波乱運とされ、離婚・孤独などの凶暗示をもつ。
「久」は死体や棺をあらわすので不吉!?
漢字「久」は死体を木で支えている形であるとされ、この漢字を名前にもつ者は不幸になるいう噂があります。しかし何度も言うように不幸になるのは「久」の字そのものの影響ではなく、姓名全体のバランスのせいです。以下に実際にこの漢字を名前にもつ有名人を見ていきたいと思います。
- 久本雅美
- お笑いタレント。天格・人格比和関係にあり成功運は上々。しかし寡婦運多く恋愛・結婚運悪し。また三才の金・金・木は人徳に乏しく、自我心強いため対人運に難ありの凶相。
- 石井一久
- 元プロ野球選手。三才の配置水・土・火は病難、障害の凶兆。目的を完遂しようとしても逆境によって潰れてしまう危険あり。健康にも要注意。
- 中田久美
- 元バレーボール選手。総運にリーダー運の21数があるため、仕事に於いては強い指導力を発揮するも、女性には強烈な寡婦運として作用するため結婚運は凶。
- 夏目三久
- アナウンサー。三才の土・金・土は精神力が極めて強く、成功運も著しい。また人格が天格・地格から生じられるためよく愛される暗示あり。ただし総運の21数は不屈の闘志と強い指導力をもつため仕事においてはいかんなく能力を発揮するが、女性には寡婦の相であり結婚には縁遠い。
「真」は死者の形だから名付けにはダメ!?
実は「真」の字は死者の形であるとされ、それ故に名には用いるべきではないという説があります。しかしこれも文字そのものに凶意があるわけではありません。あくまでも凶意は姓名の形を取ったときにあらわれるものです。以下に「真」の文字をもつ有名人を確認しておきましょう。
- 大地真央
- 元宝塚歌劇団トップスター。三才の配置やや難あるも四格がすべて吉数並びに寡婦運がないため幸福となるべき良名とみる。天と人の水・土関係は、努力邁進すれば大成功を予感させる暗示。
- 田中眞紀子
- 政治家。主運の14は繊細・神経質の暗示に加え孤独の凶相をもつ。また三才配置の水・火・木は成功運に恵まれず、目的を達しがたい凶運。
- 堀北真希
- 女優。三才配置は土・土・金と吉で、外見的にはおっとりとしていて柔和で雅量あるも、金が二つあるため内面は気が強く、成功運も順風。しかし総運の33数は強烈な寡婦・孤独運であるため、30代後半以降特に凶相あらわれ、離散・離婚等の恐れを生ず。
- 小西真奈美
- 女優。総運の36数は人生全体に於ける波乱運で浮き沈みが激しく障害・災難あり。人と外の関係は過度に異性に惹かれやすい暗示であり、不倫などに陥りやすい。
- 矢口真里
- タレント。主運に大吉数13をもつものの、三才上下相剋するため境遇波乱多く、外見良くも内実困苦あり。晩年特に凶兆強く、病難の暗示濃厚。
終わりに
「名前に使ってはいけない漢字」は、今回紹介した以外にも様々な漢字が噂されていますが、このような妄説は信じるに値しません。冒頭で述べたように、文字の意味というものは見る人によって様々に解釈されてしまうため、その文字に悪い意味を付加しようと思えば簡単に出来てしまうのです。
それを考えると、例えば時代の風潮の影響で、ある漢字に対して悪い意味が付加された時、以降その漢字を名前に使った人は運勢が悪くなるということになるのでしょうか?いえいえ、そんなことは考えられないことです。つまり文字の意味やイメージというものは常に変化する可能性があり、永続性を持ち得ない、ゆえに運勢を左右することはできないのです。
そのため、文字・漢字そのものの影響で運勢が良くなったり悪くなったりすることは有り得ません。極端に言えば、名前に「死」「殺」「糞」「飢」など悪い意味をもつ文字を使ったとしても、姓名のバランスさえ整えっていれば強い運勢を発揮することになるのです。反対に縁起の良い「吉」や「福」といった漢字を使ったとしても、姓名のバランスが悪ければ運勢は悪くなります。
このため、当然のことながら人が聞いて不快になるような漢字は論外として、基本的には命名に使っていけない漢字などないのです。